TW4、百花荘と呼ばれる下宿屋に住まう少年少女の日常。
※わからない人にはただのSS置き場。リンクはTW関係者のみフリー。
おちたおちた、なにがおちた。
真っ赤に熟れた、なにかがおちた。
真っ赤に熟れた、なにかがおちた。
「探したぞ」
その言葉に、おれは振り返る。
変な男を殺してしまったそのあと、
妹が心配で一度離れてしまったこの場所に戻ってきたら
何故か死体はなくなっていて、代わりにこの女がいた。
変な女だった。
年は多分、近い。でもその服装や風格は現代からかけ離れてた。
たしか、尼さん、でいいんだろうか。
おれの知ってるのとはちょっと違うけど(というか露出度高いんだけど)
恐らく、それであっているはずのその女はおれをじっと見ている。
「誰?おれ、きみのこと、知らないけど」
「お前は知らないさ。私が知ってるだけだ」
妖艶にほほ笑む。
柔らかに弧を描くその目は片方が隠されていた。
だが、その一つしか見えない目は、何もかもを見抜いているようにまっすぐで、
つい、視線を逸らしたくなる。
女は胸の下で腕を組み、おれに話しかけてくる。
「だれか、殺したのか?」
「ああ。邪魔だったから」
「悔いはないか?」
「ない。大事なものを護るためだから」
「変わらないんだな、鏡」
「……だから、おれはきみを知らないんだって」
「――そうだな、知るはずもない。お前が、私のことなんて」
悲しげだ。と思った。
そんな目をして女はおれへと手を伸ばす。
「だが、私は今度こそお前を救うぞ。何度でも。嫌われても」
変なことを言う奴だ。
なんだか不気味に思って、手は取らずにいたら、
そいつは笑みを崩して真剣そうな顔を見せる。
「私はお前が幸せにならなければ、幸せになったりしない」
その言葉に、突然胸が苦しくなる。
こんな見知らぬ誰かに言われて、苦しいはずがないのに。
ずっと一緒にいた誰か、大切だったような人の言葉のように思えて。
突然心が締め付けられる。
「……本当に、誰なんだよ。おまえ」
「……今は、九十九尾宮呼を名乗っている」
「そうか、じゃあ、宮呼。おまえ、おれの何を知ってるんだよ」
「お前の知らないお前を。お前が知るはずのないお前をだ」
「……わけわかんないな。本当に」
頭が痛い。
さっきの言葉がおれを侵食していくようだ。
一体何だっていうんだ。おれの知らないおれって。
女は――宮呼と名乗ったそれは真っ白な髪の下、片方だけの目でおれを見た。
「――鏡、私と共に来い」
静かで、懇願するような声色。
「今のお前は、危険だ。殺意と衝動に満ちている。
私たちと来ればそれらは世間一般に知られることなく解消される。
……安心しろ、お前のことは私が守る」
頭が割れそうに痛い。
言葉の一つ一つが、おれのなかの何かを逆撫でる。
同時におれのなかの何かが言う。
『抗ってしまえ、あんな言葉』と、『殺すことは自由なことだ』と。
悔しいが、それはとても正しかった。
誰かの下で行う行為はいつだってナニカに拘束されている。
ああそうだ、おれは、おれは自分の意志で何かを壊したいんだ。
宮呼はずっとおれを見ている。
その陰に、なんだかとても懐かしいものを感じたけれど、
それはとっくに捨ててきたものだったから、おれはその手を取らない。
そう思った理由も何もかもわからないが、捨ててきた気がした。
おれの中の何かが、じくりと広がっていく。
「駄目だ鏡、そっちに行くんじゃない。お前は、護りたいんじゃないのか?」
「……何を?誰を?おまえには関係ない事じゃないのか?」
「ない、かもしれない。でも私は」
「五月蠅い」
その言葉を最後に、おれの意識は深く沈んだ。
何だろう、どうしてこんなところへ落ちていくんだろう。
堕ちる最中に、ダレかの言葉が響いてきた。
『これでもう、抑え込む必要はないぜ?なあ鏡』
『おれたち自由なんだ!何を殺しても、何を壊してもいいんだぜ!』
ああ、それは素敵だな。
堕ちていく意識の中で、おれは笑っていた。
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■下記PCの背後。
花月・鏡(d00323)
峨峨崎・非(d06993)
■イラストについて
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この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『サイキックハーツ』用のイラストとして、
花月・鏡及び峨峨崎・非の背後(以降:霧守)が作成を依頼したものです。
イラストの使用権は霧守に、著作権は各イラストマスター様に、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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